Team Chaotix -中編-1 『ターゲット-クロウ・ザ・ウルフ』-
トゥルルルルル・・・
カオティクス探偵事務所の電話が鳴り響く。
椅子に座っていた 事務所の所長であるベクターは、受話器を取った。
「・・・はい、こちら カオティクス探偵事務所・・・」
その場にいた エスピオとチャーミーは、ベクターに視線を合わせる。
依頼が来たのだろうか?
しばらく 「はい」と相槌を打っていたが、
―――― 突然 ベクターは驚いた顔をして声を上げた。
「・・・い、命を狙われている!?」
ベクターのその言葉に、エスピオとチャーミーは当然のごとく、驚いた。
驚いた表情のまま、二人は顔を見合わせる。
「・・・はい。 ・・・はい、わかりました。 すぐに伺います。」
そう言うと、ベクターは電話を切った。
「ねね、べくたー、おひさしぶりのおしごと?」
「おぅ。 今回はちょっと厄介なことになりそうだがな。」
ベクターは椅子から降り、そのまま玄関のドアへと向かった。 すぐに行くつもりなのだろう。
チャーミーはそれがわかると、羽をはばたかせて ベクターの後をついていった。
「・・・命を狙われるとは、また物騒な・・・。」 エスピオは眉をひそめる。「・・・ベクター、それは真なのか?
一般人が 命を狙われるとは・・・。」
「さぁな。」 あっさりと ベクターは答えた。「・・・、あんな必死だったんだ。 本当だろうな。
ま、嘘か本当かなんて 自分の目で確かめりゃいい。
どっちにしても、人の命が懸かってンだ。 ほっとくわけにゃいかねぇだろ?」
そういい、ベクターは振り返る。
「まぁ、そうだが・・・」と まだ納得できていないエスピオに、チャーミーが横から口を出した。
「それにさっ、ほうしゅうもらわなきゃ そろそろ じむしょおいだされちゃうしね♪」
・・・・・・・・・・・・・・
沈黙。
「ベクター、それはどういうこ「おら、グズグズしてねぇで 行くぞ!!;」
ベクターはエスピオの言葉を 無理矢理遮り、さっさと事務所を出て行ってしまった。
「あいあいさ~♪」と チャーミーはその後をついていく。
「・・・・・・・; そんなにやばかったのか、この事務所・・・
り、了解・・・・;」
エスピオは、つい本音を言いながら、二人の後をついていった。
――――― この依頼が、エスピオの最初の仕事だった。
つまり、この任務で 『チームカオティクス』に 入るか入らないかが決まるのだ。
彼にとって、今回の任務は とても重要なものだった。
―――――― 「で、依頼内容は 命を狙っている奴――― ターゲットを捕まえることですかい?」
ベクターは依頼内容を確認する。 依頼人は コクッ、と 頷いた。
その依頼人は金持ちで、『金持ち』と 思わせるほどの 大豪邸で暮らしていた。
警察に言っても 『命を狙われている』ということなど 信じてもらえず、家には護衛用に武器があるのだが、どうしても勇気が出なかった
―――― それが、依頼した理由らしい。
依頼人の家に着いた チームカオティクスは、依頼人の家のリビングで詳しい話を聞くことにしたのだ。
「・・・しかし、どうしてまた 貴公が命を狙われているのだろうか・・・?」
「それはわかりません。」 依頼人はエスピオの質問に答える。「・・・・けれども、予想では この家の金を狙っているものだと思われます。」
「ふ~ん・・・。 おかねもちも たいへんだねぇ~・・」
チャーミーは同情するように言う。
「・・・で、そのターゲットの特徴とかは わかりますかい?」
「はい。 一度目撃していますから。」 ベクターの質問に、依頼人は頷いた。「その人は・・・種族は狼でした。
体は黄色、目は確か 緑色だったと思います。
あと、赤色のペンダントを首からさげてaいました。」
「!!?」 エスピオは驚き、目を見開いた。「・・・そ、それは真か!!?」
「えっ、あ、は はい・・きっと・・・」
依頼人はエスピオの声に、ビクッ と驚きながら言った。
エスピオは唖然と 依頼人を見る。
まさか・・・・『奴』が、ここに・・・・?!
「――――― エスピオ? エスピオ!?」
エスピオはベクターの言葉で 我に返った。
「どうした、エスピオ? そのターゲットと知り合いか?」
「え? ・・・・いや、別に・・・、なんでもない。」
エスピオはそう言って誤魔化す。
「ふ~ん」と 相槌を打って、ベクターは再び依頼人との話を続けた。
ベクターは依頼人に 敵の攻撃手段など、詳しいことを聞き始めたようだ。
それを確認したエスピオは、また思考をめぐらせた。
「(・・・・しかし、何故ここに『奴』が・・・?
一ヶ月もたたないうちに・・・『奴』は、自分と会えるのを予測して・・・? そんなまさか・・・。
しかし、これが『奴』の作り上げたシナリオならば・・・)」
「―――― オイ、エスピオ!!」
突然のベクターの言葉に、ビクリとエスピオは驚いてしまった。
「・・・・ど、どうした?」
「『どうした?』じゃねぇよ。 さっきから考え込んで・・・どうした?、は こっちのセリフだ。
何か気になることがあったのか?」
「あ、いや・・・すまない、話を続けてくれ。」
これ以上考えていたら ベクターにこのことがばれてしまうな・・・ と思い、エスピオは考えるのをやめた。
真実は、自分の目で確かめるまでだ。
「・・・大体、ターゲットのことは分かりました。」 ベクターは話を続ける。「・・・で、報酬のほうは?」
「はい、報酬のほうは心配しないで下さい。 成功したらいくらでも!
・・・・だから、お願いです! あの人を捕らえて、助けてください!」
依頼人は縋るように手を組んだ。 相当、今まで危険な目に逢ってきたようだ。
「・・・わかってますよ! あとは俺達、『チームカオティクス』に お任せ下さい!」
ベクターは ぽんっ、自分の胸を叩いた。
―――――― と、次の瞬間だった!
「――― !!! みんな、ふせるんだ!!」
エスピオは気が付き、声を出した。 反射的に、みんなは 上体をふせた。
ダン ダン ダンッ!!!
銃声と共に、弾が頭上を通過していった。 弾は三発、壁にめり込む。
「・・・うっひゃ~・・・びっくりしたぁ~・・・・;」
チャーミーはゆっくり顔を上げ、壁にめり込んだ弾を見た。
「・・・くそっ、一体何が・・・・ ――――― って オイ、エスピオ!!」
ベクターは顔を上げた時、ハッとした。
すでに立ち上がっていたエスピオが、何者かを追いかけて走っていく姿を 見たからだ。
ベクターの声はエスピオの耳には届かず、部屋を出て行ってしまった。
「・・・あれ? えすぴおは?」
チャーミーは気付いていないらしく、きょろきょろと 周りを見回す。
と、突然 ベクターは立ち上がった。
「・・・ここは確か、広い庭があったよな・・・」 ポツリと、ベクターは呟き チャーミーの方を向いた。「チャーミー、庭に行くぞ!
ターゲットは この家の近くにいるはずだ!!」
言うが早いか、ベクターは ダッ、と 走り出した。
「あ、ちょっとまってよ べくたー!」
チャーミーは急いで ベクターの後を追う。
「ち、ちょっと待ってください!」 と、依頼人が二人を呼び止めた。「わ、わたしは どうすれば・・?」
「あなたは ここで待っていて下さい!」
ベクターは振り返る。
「大丈夫、奴は必ず 捕まえてみせます!」
「・・・不覚・・・! 見失ったか・・・!」
依頼人の家の 広い庭で、エスピオは悔しそうに呟いた。
庭、といっても 花や木がたくさん植えられ、森のような状態に なっていた。
木などで隠れるところが多く、相手にも、そして 自分にも厄介なところだった。
「(・・・・これは 奴が作り上げたシナリオか・・・
奴は、依頼人を殺すのが目的ではなく、自分を殺すのが目的・・・
今まで依頼人を襲っていたのは、『チームカオティクス』
――― 自分を おびき寄せるためか・・・)」
エスピオはそう考えながら、周りを見回す。
部屋で何者かが銃を発砲したとき、殺気が感じられた。 しかし、それは 依頼人に向けられたものではなく、エスピオに向けられたものだった。
弾は一発、依頼人に向けられていたものの、残りの二発は あきらかにエスピオに向けられたものだった。
エスピオを殺そうとしているのは、決定的だった。
「(奴は今、どこにいる・・・!)」
エスピオは ギリッ、と 歯を食いしばる。
考えれば考えるほど、心に憎しみが満ちていった。
「(奴は必ず、この手で・・・―――― !)」
グッ、と 手を握り締めた―――― その 次の瞬間だった!
パァンッ!!!
「!!? ――――― うっ!!」
銃声が聞こえた直後、右足に激痛が走った。 ガクン、と エスピオは膝をつく。
右足を見てみると、そこには 撃たれた跡があった。 弾は貫通していたものの、痛みがあることには変わりない。
「足を傷つけ、動きを鈍くさせる作戦か・・・」
エスピオは苦笑する。
と、その時 スタッ、と 何者かがエスピオの前に降り立った。
「・・・よぉ。」 ニヤッ、と その者は不敵の笑みを浮かべる。「・・・俺のこと、知ってるか?」
その者は、知り合いのように エスピオに手を振った。
「・・・やっと姿をみせたか・・・」
エスピオは立ち上がる。 そして相手を、赤色のペンダントをつけた 黄色の狼を睨みつけた。
「・・・知っているに決まっているだろう。 自分は、貴様を探し続けていたのだからな・・・。
まさか、こんなに早く 会うことが出来るとは、予想外だったが・・・。」
その者は、エスピオの言葉を聞きながら、不敵の笑みを浮かべ続ける。
「・・・今まで修行をしていたのも、カオティクスに入ろうとしたのも、全て 貴様を倒すため・・・
自分は、・・・この日を待っていた。」
さっきよりも 手をきつく握り締め、エスピオは一歩前に進んだ。
「今日こそ・・・――――― 今日こそ、母上の仇 討たせてもらうぞ!
―――――― クロウ・ザ・ウルフ!!」
「エスピオ――― ッ!! エスピオ――― ッ!!?」
庭に着いたベクターとチャーミーは、まず エスピオを探すことにした。 作戦を立てるのは、それからだ。
だが、範囲が広いため、どこにいるかは予測不可能だった。
「・・・あ、べくたー! あれ、えすぴおだよ!!」
「・・・ンだと!?」
ベクターはチャーミーの指差す方を見た。 誰かと誰かが、戦っているのが見える。
「まさか、アイツ ターゲットと戦ってやがんのか!?」
ベクターは目を疑った。 誰と戦っているのかは分からないが、確かに エスピオは何者かと戦っている。
今この場で 戦う相手がいるとしたら、それはターゲットしかありえない。
「あ、いま いっしゅん えすぴおとたたかっているひと みえたよ!
とくちょうが いらいにんがいってたのと おんなじだー!」
「ナニ!?」
驚いて、ベクターは目を凝らす。
―――― 確かに、黄色の体をしていて、首から 赤色のペンダントをさげていた。 ターゲットに間違いない!
しかし、その戦いで不利な状況に置かれているのは、エスピオだった。
「・・・クソ、なにやってんだ アイツは!!」
ベクターは舌打ちした。 が、それは 無理もない。 相手のスピードが速すぎるし、エスピオのスピードも 相手の攻撃で下がっていたからだ。
それに加え、ジャンプ力もある。 スピードについていけないのも無理はなかった。
「・・・あ、えすぴお あぶない!!」
チャーミーは叫んだ。 見ると、エスピオは相手に攻撃されそうになっていた。
相手の攻撃手段は剣―――― 少しでも攻撃を受ければ、痛手を負うことになる。
チャーミーは我慢しきれずに、エスピオの所へ ビュン、と 飛んでいってしまった。
「オイ、チャーミー!!!」
ベクターは呼び止めるが、チャーミーは止まらなかった。
「――― くっ!!」
その一方――― エスピオは声にならない声を上げた。
ターゲット―――― クロウは エスピオに剣を向け、向かってくる。
攻撃されるのは分かっていたが、体が動かない。
思わず、エスピオは目を閉じた。
―――――― ッだめか!!
「―――― えすぴおーーーっ!!!!」
「・・・おわぁっ!!?」
チャーミーの声が聞こえたと思った 次の瞬間、エスピオの足が地面を離れた。
チャーミーがエスピオを抱くようにして持ち上げ、飛んだからである。
おかげで、攻撃を避けることができた。
「・・・・チャーミー、こっちに戻れ!!」
「あいあいさー!」
チャーミーはエスピオを抱きかかえたまま、ベクターの所へ戻る。
「ひとまず、隠れて 体勢を立て直すぞ!!」
ベクターの言葉に、三人はその場を離れた。
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